コーヒー業界の変遷
2000年頃より、コーヒー業界には『スペシャルティコーヒー』という言葉が広まり始めました。
これまでのコーヒー豆のように生産国が独自の基準(コーヒー豆の大きさや欠点数など)に基づいて与えた格付けを使用するというものではなく、スペシャルティコーヒーは消費者が実際に口にしたときの味わいの良さ(コーヒーの抽出液の風味)を評価した上で認められたものであったため、『評価の高いコーヒー豆=美味しい』という信頼関係が成立するようになりました。そして、その結果としてスペシャルティコーヒーでは個性的な風味が求められるようになりました。
こうしたスペシャルティコーヒー豆を単品で使用(シングル・オリジン)し、さらに抽出方法もフレンチプレスやハンドドリップ(円錐形)など様々な形で提供されるようになったスタイルを、近年ではコーヒー業界のサードウェーブ(第三波)と呼びます。分かりやすく表現すると、これまでは効率性が追求されてきたコーヒー業界の流れの中で、1杯のコーヒーに対して時間と手間をかけるようになるという大きな方向転換が行なわれたということだといえます。日本人の場合は喫茶店文化が根強くあるため、こうした業界の変遷は転換というより過去への回帰に近い感覚かもしれません。
参考ですが、第一波はコーヒー豆を大量生産することが可能になったことで、一般家庭や職場で低価格の浅煎りのアメリカンコーヒーが飲まれるようになった文化のことをいいます。
第二波は味わいを求めたスターバックスに代表されるセルフ式のシアトル系コーヒーチェーンの文化をいいます。
スペシャルティコーヒーの定義
スペシャルティコーヒーの定義は、スペシャルティコーヒー協会が定めるものに従う形式になりますが、生産国側、消費国側それぞれに別々のスペシャルティコーヒー協会があり、方向性としては同じでもその定義には若干の相違が存在します。
従来の生産国における格付けと異なり、数値化が難しい『味わい』という点を評価することになるため、日本の場合は明確な基準となる数値をあげるのではなく、下に記すような大まかな基準をあげることで定義付けがされています。
※SCAAではカッピングスコアが80点以上という基準があります。
この基準に則っていると判断されるものは全てスペシャルティコーヒーとして認識されるため、スペシャルティコーヒーに注目が集まっている現在ではやや玉石混合になりつつあります。
特に、下の定義Bの部分から、『○○生産国の△△地域、もしくは××農園のものであればそのコーヒー豆のトレーサビリティ(商品の流通において生産者情報等が追跡可能であること)が可能であるという点でスペシャルティコーヒー』と判断されていることもあるように感じるので、生豆を選ぶ際にはしっかりと味わいを見極める必要があります。
以下には日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)の定義をまとめたもの(コーヒー検定教本より抜粋)を記します。
スペシャルティコーヒーへのこだわり
スペシャルティコーヒーは従来の格付けコーヒー豆と異なり、味わいを評価した上で流通がされるようになったことで、『コーヒー = 苦い飲み物』という人々の固定観念を打ち壊し、『コーヒー豆の本当の美味しさとは何か?』を追求できるようにコーヒー業界を開放するきっかけを作った非常に重要な商品だと考えています。
消費者のみなさまが本当に美味しいスペシャルティコーヒーに価値を見出し、その対価を支払い、そしてそれが繰り返されていく事によって、生産国でもより高品質なスペシャルティコーヒーを生産するための設備投資や創意工夫を行うという好循環が生まれていきます。こうしたことを生産国へ実際に訪れることで身を持って体感することが出来ました。
こうした流れを崩さないためにも、数多くあるスペシャルティコーヒーのサンプルの中から本当に美味しいものを見つけ出し、一人でも多くのお客様のもとへ届けていくことが、私達ロースターの使命だと考えます。
だからこそ、生豆選びには徹底的にこだわります。